BODYTALK
〜 その5 〜




 見ると、関わりあった人が順に顔を赤らめていく。
 おいおい。
 保田本人はそれを意識してるのかしてないのか、優しげに周りと接している。ねえ、辻までよくわかんないけどじたばたしてるんだよ?
 とりあえず仕事の段取りを確認して、それぞれスタンバイの位置に立つ。
 カメラが回るのか・・・と思うけど。
 いーや。これはよくない。
 後藤は不穏な空気を感じたけど、そのままスタートしてしまった。
 いつもと調子が違うのはその場の全員が感じたのか、やっぱりうまく進まない。
 後藤だけがなんとなくそのわけを知っているだけに、気分は複雑だ。
 この圭ちゃんをどう呼んでいいのかはわからないけど。
「あっ!」
「えっ?! 何?」
 今だ!
 後藤はまっすぐに手を突っ張ると、思いっきり保田の身体を押し出した。
 ・・・みんなからは見えない角度で。
「わっ、わっ、わーっ!」
 大きな水しぶきが起きて、まっすぐに圭ちゃんは大きな噴水に落ちた。
 何が起きたんだー! と、スタッフが駆けよって、そこで撮影は一時中断されることになる。

「ぶえっくしょぃ!」
「わーーーっ! 圭ちゃーん」
 当然のごとく撮影はストップ。
 全身びしょぬれになってしまった保田を急いで避難させて、バスの方へと連れていく。
「着替え、どうしよう」
「移動だから持ってきてないよー」
「まいったなー。とりあえずタオルタオル」
 保田は上着を脱いでバスの外で絞り、それからきっちり閉めたカーテンの向こうで一枚ずつ服を外に放ってよこす。
 幸い車内用の毛布があったので、後藤が中を覗いた時には丸くなって後ろの座席に座っていた。
「仕方ない。今から戻って着替え用意してきます」
「急いで急いで! 日が沈んだら明日に延期だからね」
 慌ててスタッフがバイクにまたがって出発した。
 後藤はそこで休憩になったのを期にこっそりバスの中へと入っていった。
 へくしっ、と保田のくしゃみが聞こえた。
「圭ちゃん・・・大丈夫?」
「大丈夫もなにも、あんたねぇ・・・」
 ぎろっと上目遣い。
 後藤はそれでもおそるおそる奥の保田の隣に向かった。

「あんたでしょ。突き落としたの」
「へっ? えーと、その・・・」
「まったく、やり方が荒っぽいっての。アタシは壊れたテレビじゃないんだよ!」
 ほえっ? と後藤が首をかしげる。
 そういえば、落とす前とまた雰囲気違うような。
「後藤」
「うん?」
「素直に言えば出てくるかもって思わなかった?」
「へぇ?!」
 保田はまだ乾ききってない髪を軽く振った。
 水飛沫が霧みたいになって頬にかかる。
「え? 何? そしたら、圭ちゃんは自覚があるわけ?」
「自覚? ああ、そうかもね」
 微妙に車内に変な空気が流れる。
 ありー・・・もしかして、これって・・・。
「あたしに出てきて欲しかったんじゃないの?」
「は? はぃーっ。もしかして」
 保田はにやりと笑って後藤の髪の先をつかんだ。
 顔を引き寄せられる。
「さて、時間もないことだから、手早くすませないとね」
「ちょ、ちょっと待ってよー」
 後藤の目の前で保田の毛布が翻る。

「ちょっ! 待った待った」
「何よ。今さら」
「圭ちゃんに聞きたいことがあるんだよー」
 抵抗しつつもいつのまにか後ろの席に横倒しにされながら後藤は叫んだ。
 保田は後藤の身体を逃がさないように脚でロックして、毛布を上からすっぽりとかぶった。
 いきなり薄暗い空間になる。
「何だって? どんなこと?」
「だってさ、ほら。今の圭ちゃんは圭ちゃんがいっぱいいること、知ってるみたいじゃない?」
「はぁ? うん。いっぱいかどうかは知らないけど」
「それって・・・そのう、自由に出入りできるの?」
 あ! と、言いかけた後藤の口を手のひらがふさいだ。
 器用にもう片手で上着の裾から手が入ってくる。
 思わず指を噛みかけたところで、耳に息が吹きかけられた。
「さあ。あたしもそのへんのこと、よくわからないけどね」
 口許の手が首のあたりに回されて、両方から背中をなぞり上げられる格好になる。

 後藤はぎゅっと唇を結んだ。
 保田は、その「協力的」な様子にちょっと笑ったみたいだった。
「そう言う話、今したいわけ?」
「だから・・・うーんと・・・」
 なんか、どーでもいいんじゃない? って気分になりかける。
 しっかりしろ! ごとーっ!
 服の下で下着を外されるのがわかって、少し背中を持ち上げた。
 腰のあたりに乗っていた脚をずらして、後藤と交差させてくる。
 バスの近くを誰かが話しながら通った気配がした。
「だ・・・やっぱダメ!」
「しっ! まったく、聞き分けないないなぁ」
 どっちがだよー!
 濡れて冷たかった保田の手のひらが胸に触れると、後藤は強く肩をつかんだ。
 じんわりとお互いの体温が慣らされていくまで、少し待つ。
「だってさ、こんなところじゃ落ち着いてなんてできないよー」
「うん?」
「ね、今は仕事中だし。今日の夜とかにしない?」
 保田が動かしかけた手を止めた。

 よくやったぞ! ごとー。
 と、自分の中で歓声を上げる。
「夜・・・? 後藤、なんかたくらんでない?」
「たくらむなんて、そんな。後藤は圭ちゃんが好きなんだよ」
「ふ〜ん?」
「ね? そうしよ?」
 服の下で、けどまだどうしようか迷ってるのか、ころころと転がすようにして保田は指を動かしてる。
 そのたびに後藤は顔をしかめて耐えた。
 保田はそれを間近におもしろそうにしばらく眺めていた。
「わかった。じゃあ、そうしようか」
「本当?! うん! じゃ、圭ちゃんの家ってことでいい?」
「・・・そうだね」
 まだ完全に信じきれていないようだったけど、保田はとりあえず手を服から抜いた。
 後藤はほっと力が抜けるような感じがする。
 息を全部吐ききらないうちに、今度はキスがきた。
 隙を突かれたのと、タイミングもあって息苦しいくらいだ。
 しかし、どうしてこの「Hな圭ちゃん」はどうしようもないくらいに上手なんだろう?

「わかった。後藤。あんたまさかそれで来ないなんてことしたら・・・」
「行くよ! 絶対に行くからさ。ね!」
「まあ、それでおしおきするのも楽しいかもね」
 まじっぽいっす。
 毛布の隙間が開いて、やっと解放された。
 ほとんど這うようにして出ると、急いで乱れた上着を直す。
 再び毛布に丸まった保田は、その様子をじーっと舐めるように見ていた。
「圭ちゃん! エロい!」
「人のことが言えるの?」
 けらけらと楽しそうに目を細められた。
 くそー・・・。
 見てろよー、と後藤は胸の奥に小さな炎を燃やした。





・・・とまあ、ここまでがあちらに書いていた分です。
行き当たりばったりで書いていましたので、章分けとかそういうものはどうしても適当に なりがちなんですけど。

で、これ以降をここで続けたいと思っています。
そのため、多少書式とか変わるかと思いますが、ご了承ください。
では。


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